ガイド / 設計
自転車パーツで本当に公差が必要な寸法はどれか
2026年9月11日
公差とは、機械の稼働時間を求めることです。1段階厳しくするごとに、仕上げ加工、送りの低下、測定、あるいはそのすべてが加わります。自転車パーツで本当に厳しくすべき寸法は一握りで、残りはそれに付き合わされているだけです。
常に重要な寸法
ベアリングが入る穴。 ハブ、プーリー、ピボットのカートリッジベアリングには、100分の1ミリ単位の締まりばめが必要です。28 mmの6902ベアリング座なら、圧入のために+0.000〜+0.010 mm程度が一般的です。緩すぎるとベアリングがシェルの中で回り、きつすぎるとベアリングが押しつぶされて、最初から回転がざらつきます。
規格部品をクランプする穴。 28.6 mmのコラム穴や31.8 mmのハンドルバークランプは締め付けボルトで開くため、許容範囲は広めですが、それでもはめ合いです。通常は±0.05 mmで十分で、±0.02 mmなら慎重な指定です。
チェーンラインとオフセット。 取付面からチェーンリングの歯までの距離がチェーンラインを決めます。0.1ミリなら目に見えませんが、0.5ミリなら変速のクレームにつながります。
ボルトサークルの位置。 直径だけではなく、中心に対する各穴の位置と、穴同士の位置関係です。意図を正確に伝えられるのが位置度公差です。
ねじの位置と深さ。 特にキャリパーの調整幅が限られるブレーキマウントで重要です。
クランプ面と取付面の直角度と平行度。 直角から0.2 mmずれた面は、本来そのような荷重を受けるはずのないボルトに曲げ荷重をかけます。
ほとんど重要でない寸法
ステム本体の外形。装飾用ポケットの深さ。リブの正確な幅。デザイン上のえぐりのR。干渉しない限りの全高。これらは±0.1 mmまたは±0.2 mmで十分で、誰も気づきません。
他の部品に接触せず、はめ合いを決めず、顧客が測定しない寸法であれば、厳しい数値は必要ありません。
厳しい公差の実際のコスト
| 公差 | 加工会社が行うこと | 相対的な影響 |
|---|---|---|
| ±0.2 mm | 通常の切削、特別な対策なし | 基準 |
| ±0.1 mm | 通常の切削、ときどき確認 | 基準 |
| ±0.05 mm | 仕上げ加工、定期的な確認 | わずかに増加 |
| ±0.02 mm | 専用の仕上げ加工、温度への配慮、頻繁なゲージ測定 | はっきり増加 |
| ±0.01 mm以下 | 低速の仕上げ、全数ゲージ測定、不良率の上昇、場合によっては別の機械 | 大幅に増加 |
4か所ではなく40か所に±0.02 mmを入れても、部品が4倍良くなるわけではありません。価格が数倍になり、すべてのロットを遅らせる検査手順が加わるだけです。
公差がいつ適用されるかを明記する
切削後にアルマイト処理する自転車パーツで最も多いトラブルの原因は、その寸法が表面処理の前か後かという点です。
アルマイト処理は寸法を変えます。穴の直径は膜厚とほぼ同じ分だけ小さくなり、タイプII(装飾用アルマイト)で5〜25 μm、タイプIII(硬質アルマイト)で25〜50 μmです。これはベアリングのはめ合い公差より大きい値です。
図面には、次のいずれかの注記を明示的に入れる必要があります。
- 「全寸法はアルマイト処理後」と膜厚の範囲、または
- 「寸法はアルマイト処理前、穴Aはマスキング」、または
- 「寸法はアルマイト処理前、直径で20 μmの皮膜を見込んで加工」
どれを選んでも、発注側と加工会社が同じものを測定することになります。
データムについて簡単に
使用時に部品の位置を決める形状を選び、それを第1データムにします。ハブシェルならアクスル穴、ステムならコラム穴、チェーンリングなら取付面と中心穴です。
そのうえで、寸法を次々につなげるのではなく、重要な形状をそのデータムから寸法指示します。直列寸法は公差が累積するため、±0.05 mmの寸法を5つつなげると、最後の位置は±0.25 mmになり、これは決して意図したものではありません。
良い見積が返ってくる図面
- 表題欄の普通公差は±0.1 mm
- 個別に厳しい公差を入れる寸法は3〜6か所で、それぞれ理由を口頭で説明できること
- データムの構成を明記
- 表面粗さの指示は必要な箇所だけ。ベアリング座にRa 1.6、それ以外には入れない
- 材質と調質を明記する。「アルミ」ではなく6061-T6
- 表面処理、その膜厚、寸法が処理の前か後か
- どの面が外観面かの注記
こうした図面は作成に1時間多くかかりますが、1週間のやり取りを省けます。見積依頼(RFQ)と一緒に送れば、精度の高い見積が返ってきます。
よくある質問
表題欄の普通公差はどう書けばよいですか?
切削加工のアルミ製自転車パーツなら±0.1 mmが妥当な初期値で、大きな非重要形状には±0.2 mmでもかまいません。そのうえで、より厳しい公差が必要な少数の寸法を個別に指示してください。
自転車パーツの図面に幾何公差(GD&T)は必要ですか?
常に必要なわけではありませんが、ボルトサークルやベアリング座では、位置度や直角度の指示が十分に役立ちます。ボルトサークルに位置度公差が入ったチェーンリングは解釈の余地がありません。同じチェーンリングを5つの穴位置で個別に寸法指示すると、そうはいきません。
公差はアルマイト処理の前と後、どちらに適用すべきですか?
どちらかを明記してください。処理後の寸法として指示された穴は、皮膜の成長分だけ大きく削るよう加工会社に伝えます。処理前の寸法として指示された穴は、顧客が実際に受け取るものについて何も伝えません。多くのトラブルはここから始まります。